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アレルギー性鼻炎・花粉症

花粉症の疫学と原因

最近は国民的疾患となった花粉症。日本国民の25%(関東では30%超)が罹患しており、多くの場合はスギ花粉が原因です。スギ以外ではヒノキ、カモガヤ、ブタクサなどでも生じます(下記の花粉の飛散時期 参照)。スギは戦後に全国の山林で多く植樹され、その後伐採されないまま現在に至り、樹齢30年を超えた花粉産生能力が高いスギ多くなったため、1990年後半よりスギ花粉の飛散量が増加しています。若年者でも多く認められ、学童期に発症する場合も珍しくありません。原因としては、他のアレルギー性疾患同様、I型アレルギー(IgEが関与)が関連し、環境因子や遺伝的要素などが関与します。花粉が鼻や目などの粘膜に接触して、発作性のくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどが生じます。 

花粉の飛散時期 (鼻アレルギーガイドラインより)

病態と症状

花粉症は原因花粉の飛散時期の応じて症状が出現します。花粉飛散時期には鼻や眼瞼の粘膜にマスト細胞由来の炎症が生じます。マスト細胞から炎症性化学伝達物質が放出され、鼻粘膜の腫脹、鼻汁分泌過多、眼瞼結膜の腫脹などにより鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目の周囲や結膜のかゆみ、涙などに加え、露出部の皮膚症状(かゆみや発赤、はれなど)、耳のかゆみ、のどのイガイガ、咳や頭痛、微熱、倦怠感などの全身症状も引き起こします。花粉症は気管支喘息やアトピー性皮膚炎との合併が多いのですが、食物アレルギーの特殊型である口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome; OAS)という野菜や果物と花粉の共通抗原性により生じる疾患もあります。

花粉症の検査

花粉症に対する検査としては、典型的症状(花粉飛散時期と症状の一致)に加え、血液中のIgE抗体の測定や鼻汁好酸球などで診断します。

治療

多彩な症状を示す花粉症ですが、治療はそれぞれの症状・重症度に応じて治療薬を選択します。

くしゃみや鼻汁・鼻漏はヒスタミンの影響が大きく抗ヒスタミン薬や点鼻ステロイドを用いることが多く、鼻づまりは鼻粘膜の血管拡張と血管透過性亢進の関与が大きいためロイコトリエン受容体拮抗薬、TXA2阻害薬や点鼻ステロイドを選択する場合が多くなります。ただし、各薬剤とも投与回数とか使用方法が異なり、患者さんごとに使い分ける必要があります。眼症状に対しては、点眼薬での治療が主体となります。点眼の抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬、ステロイド薬などがありますが、前2者の使い分けに明確な基準はなく、患者さんに合わせて使用されます。点眼のステロイドは眼圧上昇や白内障、感染症などが生じる可能性があり、眼科での使用を推奨します。

抗原特的免疫療法の一つである舌下減感作療法が可能となっています。同治療は唯一の根治療法であり、ごく少量のアレルゲンを継続的に摂取することによりアレルギーが起きないように体を慣らしていく治療法です。開始時期に関しては、スギ花粉症は花粉飛散時期は開始不可なので、当院では6月から12月の期間が治療開始推奨期間としてます。

また当院では非特異的減感作療法であるヒスタグロビン注射、ケナコルト注射は推奨していません。ヒスタグロビンは人の献血から集めたγーグロブリンを用いる治療法です。その為、ヒトパルボウイルスB19や未知の感染症が発症するリスクが100%除外できないのが理由です。既に長期に渡り、同注射を投与されていた方で継続希望の場合は相談の上、投与いたします。またケナコルトは長時間作用型のステロイドであり、多大な副作用(易感染性、注射部位の筋萎縮・陥没、満月様顔貌、糖尿病、緑内障、白内障、胃潰瘍、高血圧、骨粗鬆症、精神障害、生殖器異常など)がある為です。

2020年から重症花粉症患者さんに対して抗体療法(オマリズマブ)が可能となっています。有効性は高いですが、体重・総IgE値によって投与量が決まっています。投与量に応じて、月額7000円程度から11万円程度(3割負担の場合)となり幅が大変大きい薬剤で、投与量が多いと非常に高額となります。マスメディアなどで1万円程度で使用可能というのは投与量が少ない場合の値段であり、誤解を招く情報と思いますのでご注意ください。来院してすぐに投与可能出来るわけではなく、最低3回の通院後(従来の薬剤への反応性や血液検査などを行うことが必須とされています)から投与可能となっておりますのでご了承ください(国からの指示です)。

また生活面としては、花粉の付きにくい上着、スカートの静電気対策、衣服の部屋干しなど、花粉を家に持ち込まないような工夫が必要です。

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