気管支ぜんそく
喘息の症状と原因
気管支ぜんそくは当院が最も力を入れている疾患です。院長熱田のライフワークでもあります。
一般的にぜんそくは気管支喘息(きかんしぜんそく)のことをさし、気管支(または気道)にアレルギー性の慢性炎症が生じ、気道が敏感(過敏性)になる病気です。発作性の呼吸困難や喘鳴(ゼーゼーやヒューヒューと音を立てて息苦しくなる状態)、咳などの症状をおこします。症状は明け方や天候の変化、風邪をひいたときなどで生じやすくなります。症状が一過性のため、そのまま放置されることもあります。
ぜんそくの原因は様々ですが、大きく2つに分けられます。1つは遺伝的因子、もう一つは環境因子です。この病気は遺伝的要素が関与することが多く、ご両親が喘息などのアレルギー疾患を有する場合、ぜんそく発症のリスクは高くなります。もう一つの環境因子はハウスダスト、カビなどを代表とするアレルゲンの関与です。その他にも、天候(気圧、温度、湿度)に変化、喫煙(受動喫煙)、運動、薬剤、月経、心因性・身体性ストレス、臭い、職業などが様々な要因が原因となって発症、増悪することがあります。
喘息の疫学
気管支喘息は小児、成人共に罹患しますが、有病率は小児15%以上、成人5-10%程度と非常に高く、近年どんどん増加しています。喘息というと、なんとなく小児の病気という感じがありますが、実は喘息患者全体をみると4人に3人は成人喘息で大人に多い病気です。
子供の頃は比較的男児に多く、乳幼児期から発症することもあります。成人になるにつれ治ること(自然寛解)することもありますが、成人に移行したり、成人再発する例も多く認めます。
成人発症の場合は、発症最多年齢は40歳代で女性にやや多く、風邪の後の長引く咳や、息切れ、喘鳴(胸のゼーゼーした音)などで発見されることが多い病気です。放置すると、肺の老化が進むため、きちんとした治療が必要な病気です。
喘息の検査
気管支喘息は気管支に炎症がおきて、気管が狭くなる病気です。とはいうものの、気管が多少狭くなっても自覚症状は全くないことが多く、自覚症状や胸の音だけでは十分な評価は困難です。そのため、気管支の狭さ(呼吸機能検査)や気道のアレルギー性炎症(呼気中の一酸化窒素濃度測定)、気道の空気の流れやすさ(呼吸抵抗)などで確認します。これらの検査は個々個人に応じた治療方針決定/治療薬剤の選定のために非常に重要な検査となります。同時に他の疾患で喘息様の症状を呈している疾患を除外するために胸部レントゲン写真撮影などを行います。
また、本疾患は環境整備も大変重要です。ハウスダストやカビ、ペットなど原因は人によって様々です。そのため、原因アレルギーの検索が重要になります(血液検査)。一般的にアレルギー検査とは血中の特異IgE抗体を測定します。スクリーニングではView39やMAST法(他の方法と比べると感度・特異度は若干落ちますが多くの抗原に対して検査できます)などを用いますが、より精密に検査をする場合は定量性に優れたCAP-RAST法やAlaSTAT法を用います。当院では病態に応じた検査法を選択いたします。
喘息の治療や予後について
ぜんそくの治療については、気管支の慢性炎症を抑える吸入ステロイド薬を中心に、気管支拡張剤や抗アレルギー薬などの薬剤をつかってコントロールしていくことが一般的です。同じ系列の吸入薬でも患者さんごとに相性があり、きちんとした薬剤選択が重要です。大きく分けて、炎症を抑えることと気管支を広げることが必要です。それらの薬剤選択、用量設定が大変重要なポイントとなります。またアレルゲン免疫療法は、アレルギー疾患に対する唯一の原因特異的療法です。薬物療法と異なり、病気の自然経過に対する修飾効果(QOL改善、治療薬の減量、喘息増悪頻度の減少など)をもたらします。これらの薬物・治療方法を的確に選択し、きちんと治療を行えば、喘息患者さんの90%は健康人と全く変わらない生活を送ることが可能です。
同時に喘息治療においては環境整備も非常に重要です。当院では様々は方法を紹介し、環境整備に役立つノウハウをお伝えします。通年生鼻炎もしくはスギ花粉症がある方は舌下免疫療法も有効な手段です。
種々の治療を行っても症状が残存する重症ぜんそくでは、種々の新規薬剤(抗体療法)が使用可能となっており、患者さんによっては「世界が変わる」ほどの効果を得られる場合もあります。現在はIgE・好酸球・IL-5・IL-4/13・TLSPといった喘息の原因となる物質をターゲットとした5種類の抗体療法が選択可能ですが、各々の薬剤で作用機序が異なり、薬剤選択が重要となります。血液検査や呼吸機能検査などで的確薬剤を選択し、安全にかつ最適な治療いたします。経口ステロイド(飲み薬)は全身的な副作用が問題となるので出来るだけ避けた治療が望ましいです(吸入薬は過度の心配は全く不要です!)。
喘息発作になってしまった場合は、気管支拡張作用や炎症を抑える薬を点滴したり、ネブライザーによる吸入療法を行います。症状が改善しない場合は入院治療が必要となる場合があります。
50年以上前は気管支喘息により年間1万人以上の方が亡くなっていました(1970年〜1990年代は6000人前後)。しかし、近年では年間1500人前後となってきました。これは、上記した吸入ステロイドを中心とする治療薬の進歩が大きいと考えられています。きちんとメンテナンスをすれば、肺の老化の速度は健常人と同じに保つことも可能であり、過度に怖がることはありません。
ぜんそくは、子供の代表的な呼吸器疾患としても知られていますが、実は喘息全体をみると成人喘息の方が多い疾患です。成人発症は40歳代で発症することが一番多く、ぜんそくの症状が疑われる場合は、ぜひ当院にご相談ください。